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2012/12/10

TRNSYS(1) TRNSYSとは?

TRNSYSって不思議なツールです。誤解を恐れずに言えば、それ自体は何の計算も出来ません。一緒に提供されるコンポーネント(計算機能が詰まっている)を並べて、つなげて、初めて計算ができるようになります。なにか特定の計算ツールというより、計算を組み立てるツールキットという感じでしょうか?個人的には開発ツールに近い印象を受けています。

別の言い方をすると、計算したい内容を知っている方向けのツールです。環境工学系の計算に使用する「式」が部品として用意されているので、それの意味とつなげ方が分ればなんでもできてしまいます。
これなんというか、WordやExcelでも一緒ですが、例えば、Excelが家計簿に使えるのは想像できても、家計簿そのものを知らないと使えないみたいなものです。家計簿の付け方がわかっていて、はじめてExcelの機能が力を発揮するのと一緒です。

なかなかそのあたりの説明が難しくて、「○○○の計算できますか?」みたいな、ピンポイントで訊かれると、どこから説明していいのか悩みます。

さてさて、そんなわけでTRNSYSを分り易く説明できないかと、入門シリーズを始めてみたいと思います。

まず1回目は「TRNSYSとは?」からです。

名前の由来


さて、このTRNSYSですが、ちょっと独特の綴りを使っています。この名前は以下の名称がもとになっています。
TRaNsient SYstem Simulation Tool

ちょっと長いですよね。後半のSystem Simulation Toolはともかく、TRaNsientってなんでしょうか?この単語を辞書で調べると、「一時的な」とか「過渡の」とか、日本語に訳しても、ちょっとピンと来ない意味があります。ちなみにtransient phenomenaだと「過渡現象」という(電気の用語?)の意味で「定常状態」に対する用語になります。(Wikipediaより

建築環境工学でいう定常計算に対して「非定常計算」、あるいは「動的計算」のような意味で使っているのじゃないかと思います。意訳すると、

非定常システムシミュレーションツール
あるいは、
動的システムシミュレーションツール

という感じですかね?製品名というより、なんだか一般的な用語みたいになってしまいます。後述しますが、開発が始まった時期(1970年代)を考えると、当時は「非定常計算」に相当するような用語がなかったのかも知れません。いまならdynamicとか、unsteadyとか使いそうです。

ともかく、動的な条件によって変化するシステム全般のシミュレーションに対応したツールに由来した名前だというのが覗えます。

でもね、省略するとき、なぜ"a"を除いて”TRN”にしたのかは謎です。スペルが覚えられにくくて困ります。何らかの理由はあるんでしょうけど、今となっては不明です。もし、ご存知の方がいらしたら連絡下さい。

開発経緯

TRNSYSの歴史を紐解くと、米国ウィスコンシン大学のSolar Energy Laboratory、通称SELにたどり着きます。このSELが米国政府から公的な支援を得てTRNSYSの開発が始まります。ちゃくちゃくと開発が進み、一般公開は1975年3月のver6.0から行われています。

TRNSYS年表
1975.03 ver.6
1975.11 ver.7.1
1976.09 ver.8.1
1977.10 ver.9.1
1979.06 ver.10.1
1981.11 ver.11.1
1983.12 ver.12.1
1990.10 ver.13.1
1994.07 ver.14.1
2000.03 ver.15.0 ←ユーザーインターフェースが充実し始める
2004.09 ver.16.0
2010.07 ver.17.0
2012.06 ver.17.1

公開からすでに40年以上の歴史があります。当初のバージョンでは太陽熱集熱器の計算プログラムだったようです。その後、開発が続けられ、現在では各種の設備機器や多数室モデルなど、幅広い用途で使用できるツールになっています。


例えば、USのLEEDの計算などでも利用されているようです。もちろん日本でも省エネ法の計算ツールとして国交省の特別認定を受けています。

日本では多数室モデルの計算で利用されている例が多いのですが、本来汎用ツールなので、さまざまな計算が可能です。
オフィシャルサイトにはアプリケーションの例が掲載れていますが、このリストを見て分かるように、実にいろいろな計算で使われています。

また、近年はユーザーインターフェースの実装が進み、より使いやすい現在の形が整います。逆に言うと、それまではテキストエディタで計算用のデータを作成していたようです。今でもテキストエディタでデータを編集する機能は健在ですが、かなり難解です。慣れるとTRNSYSの仕組みを理解する上では非常に役に立ちますが、なにか理由がない限りオススメはしません。

TRNSYSのユーザーインターフェース(Simulation Studio)

この画面でコンポーネント呼ばれる計算の部品を並べてシミュレーションを組み立てていきます。機能とデータの流れを繋いでいくだけなので、視覚的に計算の流れが見通せます。

余談ですが。。。
現在はSimulation Studioという名前ですが、以前はIISiBat(イイジバット)という名前で呼ばれていました。名前の由来は仏語で建築のなんとかいう意味の省略らしいのですが、ごめんなさい、すっかり忘れました。
 
IISiBat = Egypt?

このIISibat、なぜかアイコンがエジプトのピラミッドをモチーフにしていました。ピラミッドといえばエジプト、これはもしかすると、「IISiBat(イイジバット)」と「エジプト」のダジャレか?と疑っていましたが、単に開発担当者がエジプト好きなだけという話でした。旅行から戻った直後にデザインしたとか何とか。。。
ver.16まで使われていたピラミッドのアイコン。
コンポーネントの組み合わで計算を行うTRNSYSの仕組みを考えると、石積で築かれたピラミッドがアイコンというのも、なんだか的を得ている気がします。
話がそれました。

開発体制

SELで始まったTRNSYSの開発は、その後、各国の研究機関、開発会社など参加する組織が増え、現在は国際的な協力体制で継続的に行われています。

主な開発拠点は3つあります。

  • TESS社(US)


民間企業になりますが、SELと連携してTRNSYSを一般向けに提供している会社です。TRNSYSの総元締めといったところです。
TRNSYSの基本部分、計算のコアになる部分の開発を行なっています。
また、TESS社が独自に開発したコンポーネントをTESS Component Libraryとしてリリースしています。主に設備系のものが多く含まれています。

  • CSTB(仏)

フランスの公的な研究機関。Simulation Studioの開発を行なっています。ユーザーインターフェースの開発の他、TRNSYSで使える簡易言語「W language interpreter」やパラメトリックスタディなどの関連ツールも開発しています。

  • TRANSSOLAR社(独)

民間の開発会社になります。TRNSYSで多数室モデルを扱うモジュール、Type56を開発しています。関連して多数室モデルを扱う、TRNBuild、TRNSYS3D、それに換気計算の拡張を行った多数室モデルTRNFlowの開発を行なっています。


この3つの開発拠点に加えて、販売、サポートを行う代理店が世界各地に存在します。販売の他、各国の個別の事情に応じたサービスやサポートの提供を行なっています。



またまた余談になりますが、拠点が日本から見て欧州、北米と、ちょうど8時間ぐらいずつズレているので時々ラッキーな事が起きます。
例えば、深夜に問い合わせを出しておいたら、翌朝には対策が日本に届いている、なんてことが事が起こります。(逆に、なかなか英語が通じなくて、一日単位の応答で話が進まないってケースもあって困る事もありますけどね)

つづく。


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