TRNBuildの設定項目の訳語を考える

3月に入り、年度末の慌ただしさも落ち着いてきました。少し時間的に余裕もでてきたので、TRNSYSのチュートリアルの和訳作業を再開しています。

今回は、その和訳作業中のチュートリアルからTRNBuildの設定項目のお話です。

TRNBuildの設定項目

下の図は Heating type で set temperature(暖房設定温度) を設定している画面です。T設定でよく見かける画面ですが、TRNBuildには値の指定方法としてConstant value(固定値)、Input(外部からの入力値)、Schedule(スケジュール)の3種類が用意されています。

この3種類の指定は設定温度に限らず、TRNBuildでは頻繁に登場します。

TRNBuild、 Heating typeの設定画面
TRNBuild、 Heating typeの設定画面

下の図は暖房設定温度をInputで設定している画面ですが、さて、ここで問題です。図の矢印の部分はなんと呼ぶでしょう?

TRNBuildのInput
TRNBuildのInput

TRNBuildのInputは一次関数

残念ながらTRNSYSのドキュメントでは特に呼び名は明記されていません。でも、よく見るとInputは y=ax+b のような一次関数になっています。

素直に名前を付けると、それぞれ「傾き」と「切片」です。

傾きと切片?
傾きと切片?

これをドキュメントの説明文で使うとなにかしっくりきません。(数学の教科書風になってしまって日本語として変な感じになります)

ちなみに原文ではmultiplier、additive valueとか multiplication factor, addition factorと表記が安定していません。

しばし悩みましたが、日本語はそれぞれ係数加算値という表現にまとめました。

係数と加算値
係数と加算値

この訳を決めるのに約半日。なかなか作業が進みません。なるべく分かり易い日本語にすべく奮闘中です。

つづく。

TRNSYSでPMVのDetailed modeの設定

同じ建物の部屋でも、窓付近と部屋の奥側の評価をしたいケースって有りますよね?

PMVで評価する場合、TRNSYSの計算では、MRT(平均放射温度)の計算方法を指定した計算が可能です。以前に紹介したPMVの計算では、MRTは面積按分で計算していました。今回は室内の位置による影響を考慮して計算する方法の紹介です。(Comfort typeやOutputの指定は前回の投稿を参照して下さい)

MRT(平均放射温度)

さて、MRTとは。。。

(エ) 熱放射 

周囲の表面温度が低ければ気温が高くても快適になる。 その放射環境を表現するた めに、平均放射温度という概念が用いられる。 平均放射温度(MRT)とは、周囲の 全方向から受ける熱放射を平均化した温度表示を言う。

以上、環境省のサイトより引用

ということで、このMRTの計算方法を指定します。

下の図は実際にPMVの計算にMRTを指定した例です。Detailed modeを選択して、MRTを計算する位置を指定しています。後述しますが、この例では同じ室内で4箇所のPMVを計算しています。

MRTの計算位置の指定
MRTの計算位置の指定

設定方法

Detailed modeではMRTを計算する位置の情報が必要になります。これで窓側とか部屋奥の指定を行います。MRTの計算位置の指定は次の手順で行います。

  1. 計算位置をGeoPositionを使って定義する。
  2. ZoneへComfort type, GeoPositionを割り当てる

では設定を始めます。

GeoPositionの定義

例によって2室モデル演習のモデルを使用します。図のように窓際から1m間隔でGeoPositionを4つ定義します。

GeoPositionの配置位置
GeoPositionの配置位置

図の配置位置に合せてGeoPositionを追加します。

  1. Navigatorの「Geo-Info」をダブルクリックして設定画面を表示する
  2. Point Geometryで「gain, comfort」を選択する
  3. 」ボタンをクリックして、新しいGeoPositionを追加する
  4. GeoPositionを配置するZoneを選択する
  5. Comfort typeで使用するため、「comfort」を選択する
  6. 配置する位置を座標で指定する※

※座標は上の平面図の左下隅が座標原点(0/0/0)です。図面に合せて位置を指定します。高さは任意ですが、ここでは高さ1mで統一します。

GeoPositionを追加する
GeoPositionを追加する

ZoneへComfort type、GeoPositionを割り当てる

ZoneへComfort typeを割り当てる際に、「detailed mode」を選択して、GeoPositionを割り当てます。

ZoneへComfort type, GeoPositionを割り当てる

これでGeoPositionの指定は終了です。あとはOutputを追加して計算を行います。

ということで、図はPMVの計算結果を出力した例です。(2月下旬の2日間を抜粋)

PMVの計算結果
PMVの計算結果

同じ建物、 同じ室内でも位置によって異なる結果になっていることが分かります。 このようにGeoPositionを指定することで、室内の位置による快適性の計算が行えます。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。

Windows10 Pro(64bit, 1809)
TRNSYS18.01.0001

TRNSYSの換気連成計算の仕組み

TRNSYSの換気連成モデル

連成計算って何か難しく聞こえますが、仕組みとしては単純です。TRNSYSの換気連成の仕組みを見てみましょう。

図はTRNSYSのCONTAMを使った換気連成のサンプル(C:\TRNSYS18\Examples\Calling_Contam\CombinedThermalAirflow.tpf)です。Type56とCONTAMのコンポーネントが相互に接続されています。

BuildingとCONTAMの接続
BuildingとCONTAMの接続

接続関係を見ていきます。

Building(Type56)→CONTAMへの接続

BuildingからCONTAMへは、Type56で計算された室温の計算結果が接続されています。この室温を受け取ったCONTAM側では、この値を使って外気、室間との換気を計算します。

Type56からCONTAMへの接続
Type56からCONTAMへの接続

CONTAM→Building(Type56)への接続

次は、逆にCONTAMからBuildingへの接続です。CONTAMで計算された換気量をBuilding(Type56)へ引き渡しています。この例では各Zoneの外気との換気量、Zone間の室間換気量の計算をType56へ引き渡しています。

CONTAMからType56への接続
CONTAMからType56への接続

Building(Type56)の内部の設定

Type56が受け取った値がどのように使われているか、TRNBuildで設定を見ていきます。

図はZone(MAINZONE)に割り当てられているInfiltration type(漏気)の設定です。CONTAMから受け取った値を換気回数として扱っています。

Infiltration typeの設定
Infiltration typeの設定

Zone間の換気量(室間換気)は、隣接するZoneからのCoupling air flowとして扱っています。

隣接するZoneからの換気量
隣接するZoneからの換気量

このようにCONTAMの計算結果をInfiltration typeとCoupling air flowで処理して、温熱計算、室温の計算結果を再度CONTAMへ渡す繰り返しです。

ほらね、連成って仕組みとしてはごく単純です。却って、CONTAMでモデルを作成する方が大変かも知れません。

Type56と他のシステムを組み合わせる場合も、基本的に同じ考え方です。

例えば空調システムと組み合わせる場合は、Type56からは室温、湿度を渡し、逆に空調システムからは風量や、温度、湿度をType56へ渡します。Type56では、これらの値をVentilation type(機械換気)で処理します。

ヒートコンベクターなど、直接室内で使用する機器であれば熱源としてGain/Loss typeで処理することができます。

Type56はInputで受け取ったデータを、各種の設定として利用できるようになっています。工夫次第で様々なシミュレーションに対応することができるのです。

TRNSYSでPMVを計算する

建物の温熱環境の評価として、快適性指標が使われる事があります。

TRNSYSの快適性指標

TRNSYS,TRNBuildでは、以下のような快適性指標の計算が行えます。

  • MRT 平均放射温度
  • OT   作用温度
  • PMV  予想平均温冷感申告
  • PPD  予想不満足者率

この中から、比較的よく使われるPMVの設定方法について解説します。

PMVとは?

PMVは人間の感覚量から物理的考察に基づいて温熱快適性を表示したもので、1967年にデンマーク工科大学のオレ・ファンガー(英語版)によって提唱された。温冷感を決定する環境側の4要素(気温[℃]・湿度[%]・風速[m/s]・熱放射[℃])に、人体側の2要素(代謝当量(英語版)[met]・着衣量[clo])を加えて考慮する。PMVでは、PMV=0の状態を熱的中立とし、-3から3のあいだで人間の温熱快適性を表現する。なお、極端に過酷な環境下ではPMVは適応できない。

Wikipediaより引用

ということで、計算にはいくつか値が必要です。気温、湿度など通常、Type56が計算する値の他、風速、met, cloなどの値が必要になります。

TRNBuildでは、これらの値を Comfort typeで扱います。(PMVを出力する前提としてComfort typeの定義が必要です)

次の順序で設定します。

  1. clo, metなどPMVの計算に必要な値をComfort typeとして定義する
  2. PMVを計算したいZone(Airnode)へComfort typeを割り当てる
  3. OutputsへPMV(PMVLV、Ntype124)を追加する

Comfort typeを定義する

TRNBuildの画面で操作します。

  1. Comfort typeのアイコンをクリック
  2. 表示された画面の右下の「N」ボタンをクリックする
「N」ボタンで新しいComfort typeを追加する
「N」ボタンで新しいComfort typeを追加する

名前の入力画面が表示されるので、分かりやすい名前を入力します(この例ではデフォルトのままです)

新しいComfortTypeの名前を入力する
新しいComfortTypeの名前を入力する
  1. Clo,Metなどの値を確認、必要に応じて値を変更する
  2. 「✔」ボタンをクリックして、画面を閉じる
Clo,Metなど値を確認する
Clo,Metなど値を確認する

それぞれの値については、ドキュメントの「5.2.4.9. Comfort」に参考値が記載されています。

以上で、Comfort typeの作成は終了です。次は、Zoneへ作成したComfort typeを割り当てます。

ZoneへComfort typeを割り当てる

PMVを計算するZoneへComfort typeを割り当てます。対象のZoneの設定画面を開いて、次にように設定します。

  1. Comfort typeのアイコンをクリック
  2. 表示された画面で、「+」ボタンをクリックしてComfort typeを追加する
  3. リストから、先ほど作成したComfort typeを選択する
  4. 「✔」ボタンをクリックして画面を閉じる
ZoneへComfort typeを割り当てる
ZoneへComfort typeを割り当てる

MRT(Mean Radiant Temperature)の計算方法を指定する事も可能です。デフォルトでは「simple model」が選択されていますが、「detailed mode」で、GeoPositionを使った詳細な計算も可能です。
参考:TRNSYSでPMVのDetailed modeの設定

Outputの指定

Outputの設定画面で、PMVの出力を追加します。

  1. リストから計算対象のZoneを選択する
  2. 「←」ボタンをクリックして、Zoneを「Selected “Thermal Airnodes”」へ追加する
  3. 「comfort outputs」を選択する
  4. リストから「PMVLW」(NType 124)を選択する
  5. 「←」ボタンをクリックして出力を追加する
  6. 「PMVLW」をダブルクリックする
PMV(PMVLW)の出力を追加する

ここで、さらに設定画面が表示されます。つづいて次のように設定します。

  1. リストからComfort typeをクリックして選択する
  2. 「←」ボタンをクリックして、”Selected “Comfort Definitions””へ追加する
  3. 「✔」ボタンをクリックして画面を閉じる
PMVの出力へComfort typeを割り当てる
PMVの出力へComfort typeを割り当てる

以上で、設定は終了です。

Simulation Studioへ戻って、「Update building variable list」を実行すると、Outputsの項目にPMVの出力が追加されます。

あとはType65などでグラフへ出力して、計算結果を確認すればOKです。PPDの計算も同じ方法で追加できます。

これで快適性指標を使った室内環境の評価が可能になります。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。

Windows10 Pro(64bit, 1809)
TRNSYS17.02.0005

TRNSYSと換気計算の連成

建物の温熱シミュレーション

TRNSYSで多数室モデル、いわゆる建物の温熱計算はType56(TRNBuild)を使って行います。暖冷房負荷の計算や、設備機器との組み合わせの計算に便利なモジュールです。

建物のシミュレーションでは条件として外気からの換気の負荷を設定する必要がありますが、通常は換気量を「条件」として計算を行います。例えば、住宅などであれば省エネ法に基づいた0.5回/hを固定の条件として設定します。

この条件として設定する方法は、換気の効果、例えば窓開けの効果を検討するようなケースも、換気回数を増やした条件に変えることで対応することができます。

とはいえ、風向や風速の影響や、建物の気密性など、より詳細な換気を検討する場合には換気計算が必要になります。

換気回路のシミュレーションとの連成

TRNSYS、Type56は上述したように、温熱計算のモジュールです。換気の計算は別途、換気計算のツールと組み合わせて計算を行います。

概ね以下のように処理します。

  1. 換気回路のシミュレーションで風向、風速や建物の気密性、換気ファンなどの機器、それに室温などにもとづてい換気量を計算する。
  2. Type56では、その換気量を外気、室間の換気として扱い、その他の条件とともに室温を計算します。
  3. 室温は換気にも影響を与えます。例えば、室間や吹き抜けの温度差によって換気に影響します。Type56の室温は、再び換気回路の計算へ引き渡されます。(1.へ戻って繰り返します)

このように温熱、換気の結果を相互に利用して連成計算を行います。

換気回路のシミュレーション

TRNSYSには連成可能な換気回路のシミュレーションがいくつかあります。

TRNFlow

TRNSYS,TRNBuildのオプション。TRNBuildと統合されています。温熱のモデルに対して換気回路の条件を設定することで連成計算を行います。温熱と換気のモデルをまとめ扱えます。

TRNFlowのサンプル
"C:\TRNSYS18\Examples\TRNFLOW_example\Restaurant_TRNFlow.tpf"
TRNFlowのサンプル
“C:\TRNSYS18\Examples\TRNFLOW_example\Restaurant_TRNFlow.tpf”

TRNFlowはType56に統合されているため、見た目には通常の温熱計算のモデルのように見えます。

CONTAM

NIST(National Institute of Standards and Technology、アメリカ国立標準技術研究所)が開発、提供する換気シミュレーションプログラム。https://www.nist.gov/services-resources/software/contam

TRNSYSとの連成はType97を使用します。サンプルも標準(C:\TRNSYS18\Examples\Calling_Contam)で添付されています。

サンプル C:\TRNSYS18\Examples\Calling_Contam\CombinedThermalAirflow_AHU.tpf

CONTAMのサンプル
C:\TRNSYS18\Examples\Calling_Contam\CombinedThermalAirflow_AHU.tpf

図から分かるように、Type56とType97(CONTAM)を相互接続して連成計算を行います。建物の計算と、換気のモデルを分けて計算を行います。

MATHIS

フランス、cstb(フランス建築科学技術センター) が開発する換気計算シミュレーション。cstbはTRNSYSのSimulation Studioの開発元です。このため、TRNSYSのプロジェクト作成時のオプションとしても用意されています。

Mathisのオプション
MathisとTRNSYSの連成

上記のように、TRNSYSは3種類の換気回路のシミュレーションツールに対応しています。それぞれ、分かり易いサンプルも用意されています。

このように温熱と換気を組み合わせることで、より詳細な計算が可能になります。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。

Windows10 Pro(64bit, 1809)
TRNSYS18.01.0001(64bit)

TRNSYS-USERSより(壁の厚みとZoneの容積)

壁の厚み(Thickness)とZoneの容積についての割と良くある疑問です。

TRNSYS-USERS
http://lists.onebuilding.org/pipermail/trnsys-users-onebuilding.org/2018-May/030139.html

質問をざっくりまとめると…

Construction/Wall typeの厚みは壁の熱の特性のみに影響するのか、Zoneの容積にも影響するのか?
また、Zoneの形状を作成する場合は、容積を考慮して内法寸法をとるのか、外周でとるのか?

回答者の答え

Construction/Wall typeの厚みはZoneの容積には影響しません。壁の熱特性のみに影響します。
モデリングをする際に壁の内法、外周、壁芯のどれを採用するかについてのコンセンサスはありません。私は普段は外壁については内法、内壁は壁芯を採用しています。

Zoneの容積を考えると外壁は内法、内壁は壁芯というのは理にかなっている気がします。SketchUp/TRNSYS3Dのモデリングでは、個人的にはすべて壁芯で寸法をとるケースが多いのですが、そうすると壁厚の分だけZoneの容積は増えることになります。そうかと言って容積優先で内法でモデリングするとZone間の位置関係がおかしくなります。

image

Zoneを内法で取ると間が詰まるので歪んでしまう

この回答者のように外壁側は内法で寸法を取るのはバランスが良いかもしれません。

とはいえ目的によります。例えば、壁や開口部の断熱性能の違いを比較をするのであれば、モデルは同じで材料物性値や厚みを変えて比較することになります。容積についてはさほど影響ないので、すべて壁芯で問題なさそうです。(部屋の面積や壁厚にもよります)

実測と計算結果を比較するようなケースでは、条件によっては容積が重要なるケースも考えられます。そういった場合には内法でモデリングが有効かも知れません。何を計算したいかによってモデリングの考え方も変わってくるのだと思います。

換気の影響を検討する

TRNSYSを使った建物の換気の影響を検討するケースって割とあります。以前は住宅が多かったんだけど、事務所ビルも省エネ、ゼロエネ対策で検討するケースがあります。

換気回数や実施する時間帯でどの程度の効果が見込めるか検討するわけですが、これをZoneの気積(容積)を基準に普段は換気回数で指定します。

でも、まれにVentilation Typeで処理したいことがあります。でもVentilation Typeだと換気量[kg/h](換気回数[回/h]じゃなくて)で指定なんですよね。これが換算するのが割とめんどくさい。Zoneの容積が〇〇m3だから密度と換気回数を掛けて。。。

Equationを使って換算

こういう時はEquationを一個配置して、次のような式を入れておきます。例)1回/h換気

ACH = 1

AirflowRate
= 43.2*0.987*ACH  ! Zoneの気積[m3] x Air density[kg/m3] x 換気回数[回/h]

このAirflowRateの値をInput経由でType56/Ventilation typeへ引き渡して処理すればっきりします。換気回数を変えるときはACHの値を2,3,4…のように順に変更して計算を繰り返します。image

ちなみにTRNSYS18からはパラメトリックスタディ機能で、あらかじめACHの値を何パターンか用意して一気に計算することもできます。(いっぱいパターンがある場合はまとめて計算できる)

下の画面は0回/hから1,2,3…ように増やして計算した例。

image

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit)
TRNSYS18.00.0017(64bit)

TRNSYSで内断熱と外断熱は計算できる?

受託でTRNSYSの計算を行うことがあります。割と多いのが断熱性能の検討の案件です。断熱性の種類や、厚みなど。また、これに加えて蓄熱性能の考慮が含まれることが多々あります。どこに蓄熱部位を設けたら効果があるか、もしくは無いかといった検討を行います。典型的なのが内断熱外断熱の比較です。

ところで、外断熱ってなんでしょうか?


外断熱
(そとだんねつ、英: External wall insulation)は、建物の断熱層の位置もしくはその工法を指す。主にコンクリート構造物など熱容量の大きい建物の外側に、断熱層を設け、建物を外気から断熱して、建物の蓄熱(または冷却した状態)を逃がさないようにする方式。逆に、外周の鉄筋コンクリート躯体の内側で断熱する工法は、内断熱という。
Wikipedia:外断熱より引用

単純な話、断熱材が躯体の外側なのか内側に位置するかの違いです。初めて外断熱って聞いた時は何が良いのかぴんと来なかったんですが、ポイントは蓄熱です。Wikipediaの説明にあるように、RC造のような熱容量の大きな躯体では蓄熱、蓄冷効果が得やすくなります。

TRNSYSで内断熱と外断熱を扱う

計算用の建物モデルの躯体はConstruction Typeで定義しますが、内断熱と外断熱の違いはLayerの並び順として扱う事ができます。

下の図はTRNBuildのConstruction Typeの設定画面です。この画面をよく見るとLayerの項目にfront/inside, backの表示があります。

image

このfront/inside, backの順で、Layerの並びが建物モデルの壁に適用されます。

image

基本的には室内から室外へ向かう並び順として扱われます。平面、立面にすると、図の矢印の向きで扱われます。
image

この並び順を内断熱、外断熱の材料構成に合わせた Construction Typeを定義することで計算を行うことができます。

計算してみると

下の図はまったく同じ材料の構成でFront/Backの並び順を逆順にして計算した室温の結果です。

image

東京、5/1から5日間の自然室温

同じ材料の構成でも断熱材と駆体の位置が入れ替わると室温の振る舞いが全く違ってくる事が分かります。くどいようですが材料の並び順変えただけですよ、これ。

断熱性能

この例では材料を並び替えただけなので、断熱性能で見るとまったく同じになります。下の図はConstruction Typeの設定画面ですが、並び順が変わってもU値は全く同じになっています。

image image

外断熱(右)と内断熱(左)のConstruction Type

断熱性能が同じでも蓄熱の取り方で建物の振る舞いとしては大きく変わります。面白いですよね。一般的に木造では蓄熱部位が少なくなりますが、壁や床に熱容量の大きな材料を使う事で蓄熱効果を得る事ができます。蓄熱がうまく働くか、逆にわるく働くか、シミュレーションを繰り返す事で検討する事ができます。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit)
TRNSYS18.00.0017(64bit)

TRNSYSをPythonから実行する

Pythonのsubprocessモジュールを使うと、簡単に外部プログラムを実行することができます。

そして、TRNBuild, Simulation Studio, TRNSYSもコマンドラインから起動できます。で、組み合わせるとスクリプトを使って、一連の処理をまとめて実行することができます。

次の例では、一連の処理をPythonから実行しています。

1.TRNBuildでVFM, SHM/ISMを生成
2. Simulation StudioでDckファイルの書き出し
3. TRNSYSで計算を実行

普段はあまりなさそうな使い方ですが、何度も計算を繰り返すようなケースで役に立ちそうです。

例)RunTRNSYS.py

# coding: utf-8
"""
This example shows how to run TRNBuild, Simulation Studio and TRNSYS.
coded by Yuichi Yasuda @ quattro corporate design
"""

import subprocess
#from subprocess import Popen

if(__name__ == '__main__'):
    # TRNBuild
    #--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    # Creating VFM from command line
    subprocess.call(r'"C:TRNSYS18BuildingTRNBuild.exe" "C:TRNSYS18Examples3D_Building6_Step_Add_Daylightbuilding_ModGeo.b18" /N /vfm')
    
    # Creating SHM/ISM from command line
    subprocess.call(r'"C:TRNSYS18BuildingTRNBuild.exe" "C:TRNSYS18Examples3D_Building6_Step_Add_Daylightbuilding_ModGeo.b18" /N /masks')

    # Simulation Studio
    #--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------      
    # Creating DCK file from command line. 
    # command line options
    #   /d create deck file
    #   /r run simulation
    #   /q quit
    subprocess.call(r'"C:TRNSYS18StudioExeStudio.exe" /d /q "C:TRNSYS18Examples3D_Building6_Step_Add_DaylightBuilding.tpf"')

    # TRNSYS
    #--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    # Running TRNSYS in interactive mode
    #subprocess.call(r'"C:TRNSYS18ExeTrnEXE64.exe" "Building.dck"', cwd=r'C:TRNSYS18Examples3D_Building6_Step_Add_Daylight')

    # Running TRNSYS in batch mode
    # subprocess.call(r'"C:TRNSYS18ExeTrnEXE64.exe" "Building.dck" /n', cwd=r'C:TRNSYS18Examples3D_Building6_Step_Add_Daylight')

    # Running TRNSYS in Hidden mode
    subprocess.call(r'"C:TRNSYS18ExeTrnEXE64.exe" "Building.dck" /h', cwd=r'C:TRNSYS18Examples3D_Building6_Step_Add_Daylight')
  

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit)
Python:Anaconda 5.1(Python 3.6/64bit)
TRNSYS18.00.0017(64bit)

加湿、除湿のコントロール(TRNSYS-USERSより)

TRNSYS-USERSでType56の加湿、除湿についての話題が流れていました。

[TRNSYS-users] Conditional Output

http://lists.onebuilding.org/pipermail/trnsys-users-onebuilding.org/2018-February/029874.html

外部の除湿器、加湿器を使って湿度が一定以上なら除湿、一定以下なら加湿としたいようです。(type56のDehumidification,Humidificationでもできますが、除湿器、加湿器そのものをシミュレーションしたいんでしょうね。下図はcooling typeの設定例)

image

メーリングリストでは対策としてThermostatの利用が提案されています。温度の場合と同じように、Thermostatで制御して、おらくVentilation typeで給気へ加湿するような処理なんでしょう。

Thermostatってそういう使い方もあるのか。でも温度と湿度じゃ単位違うからTRNSYSに怒られるかも?(コンポーネントによって単位系をしっかりチェックしているのでエラーになる可能性があります。まあ、そういう場合はEquationを経由すると回避できるんですけどね)

2018/2/26 追記

ドキュメントを見ていたらDehumidistat,Humidistatというコンポーネントを見つけました。(下図)
除湿、加湿の制御にはこれらのコンポーネントが使えそうです。

image