TRNSYSでエアコンのCOPを計算する

梅雨も明けて、本格的な夏がやってきましたね。エアコンも大活躍です。

さて、エアコンですが、建物のシミュレーションでは冷房や暖房負荷の計算を行うことがあります。さらに進んでエアコンが消費する電力ヘ換算するケースもあります。

消費電力はエアコンの性能や運転条件により変化します。単純に暖冷房負荷=消費電力ではないため、そこには何らかの換算処理が必要です。

この夏は電気代も気になるところですが、今回は暖冷房負荷と消費電力のお話しです。

暖冷房負荷とは?

暖冷房負荷は、建物を快適な温度に保つために必要なエネルギー量です。例えば、真夏に室内を涼しく保つために必要な冷房や、真冬に暖かく保つために必要な熱量を指します。

前述したようにエアコンが実際に使用するエネルギー量は、単に暖冷房負荷だけでは決まりません。そこには「COP(Coefficient of Performance)」という概念が関わってきます。

COP(性能係数)とは?

COPは、エアコンやヒーターなどの暖冷房機器の効率を示す指標です。簡単に言うと、消費した電力に対してどれだけの冷暖房能力を発揮できるかを表します。

  • 冷房時のCOP:エアコンが1kWhの電力を消費して、何kWh分の冷気を生み出せるか。
  • 暖房時のCOP:ヒーターが1kWhの電力を消費して、何kWh分の熱を生み出せるか。

例えば、COPが4であれば、1kWhの電力を消費して4kWh分の冷暖房効果を得られることになります。この例の4kWhは冷房負荷に相当します。逆に言うと冷房負荷をCOPで割って消費電力を求める事ができます。

実際、この換算方法は簡易な消費電力の計算方法としてよく使われます。

COPは製品カタログなどに記載されているので、その値と暖冷房負荷から大まかな消費電力を求めるには便利な方法です。

COPは変化する

ところがCOPは常に一定ではなく、室温や外気温などの条件によって変化します。例えば、外気温が非常に高いときや低いときには、エアコンの効率が下がり、COPも低くなります。つまり負荷に対してより消費電力が大きくなります。

暖冷房負荷から正確な消費電力を求めるには、運転条件に基づいてCOPを見積もることが重要になってきます。

Type2605 COP Calculator

前述のようにCOPは重要ですが、その計算は少々複雑です。今回、TRNSYS用にType56で計算された負荷量、室温,外気条件からCOP、消費電力を算出するコンポーネントを新たに開発しています。

このコンポーネントでは、「家庭用エアコンの熱源特性モデル(電力中央研究所)」に基づいて、COPの計算を行います。暖冷房負荷はType56の計算値をそのまま使用して、そこから暖房と冷房のCOP、消費電力の計算を行っています。

図は暖冷房負荷計算のモデルにCOPの計算を組み込んだ例です。赤枠のコンポーネントがType2605です。

Type56,およびType35への接続は図の通りです。Type56で計算した室温、湿度、顕熱負荷を入力として受け取っています。

コンポーネントの構成から分るように、通常の暖冷房負荷モデルの計算結果を使ってCOP、消費電力を計算しています。このように、既存のモデルへType2605を追加してCOP、消費電力を計算することができます。

注)顕熱負荷が対象です。潜熱負荷については別途考慮する必要があります。

まとめ

エアコンの消費電力は性能係数(COP)によって大きく影響されます。COPは、エアコンの運転条件によって変動します。正確な消費電力を見積もるためには、運転条件に基づいたCOPの評価が重要です。

新たに開発されたType2605 COP Calculatorでは、Type56が計算した負荷量、室温,湿度などの条件からCOP、および消費電力を計算します。

このコンポーネントを利用することで、暖冷房負荷計算モデルにCOPの計算を簡単に組み込むことができます。

Type2605 COP Calculatorについて詳しくは株式会社クアトロ、もしくはTRNSYSのサポート窓口までお問い合わせ下さい。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。

  • Windows11 Pro(64bit, 23H2)
  • TRNSYS18.06.0001(64bit)
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