TRNSYSでラジエーターをシミュレーション

真夏に季節感の無いタイトルですが、建物のモデルと暖冷房機器のシミュレーション例のご紹介です。
多数室モデル(Type56/TRNBuild)では、暖冷房の負荷を計算することが可能ですが、これは個別の機器を想定したものではなく、室内を設定温度に保つために必要な負荷を計算します。
特定の機器を使った暖房、冷房のシミュレーションを行うには、それぞれの機器に対応したコンポーネントと組み合わせて計算を行います。
基本的な考え方
TRNBuildには内部発熱、発湿源を扱うGain typeが用意されています。Gain typeでは任意の発熱量、発湿条件を設定する事が可能です。この機能を利用して、外部のコンポーネントで計算された発熱量をGain typeとして室内へ導入します。
以前に床暖の例をご紹介していますが、これも同じ考え方で計算しています。
ラジエーターのコンポーネント
ラジエーターはTESS HVAC Libraryにいくつか用意されています。
- Type 526: Heat Emitter / Simple Radiator
- Type 792: Hot Water Radiator (Correction Factor Method)
- Type 1231: Hydronic Heat-Distributing Unit (Radiator)
利用例
いずれもサンプルが用意されています。以下、Type1231を例にご紹介します。
C:\TRNSYS18\Tess Models\Examples\HVAC Library\Radiator\Type1231_v2a.tpf
まずはRadiatorの制御部分ですが、この例ではZone, DININGの室温をThermostatを使って判定しています。
ThermostatのParameter, Inputを確認すると、暖房設定温度20℃、dead band(不感帯、調節感度)2℃で制御しています。
室温が低下して20℃を切ると(実際にはdead bandがあるので19℃)、Control signal for heatingから1が出力され、Pump/Control signalへ送られます。
これでPumpが運転状態に切り替わり、radiatorへお湯の流量と温度を出力します。
次はいよいよRadiatorです。RadiatorとType56の接続を確認すると、Type56からRadiatorへは室温が、逆にRadiatorからはHeat Transfer Rate(熱伝達量)をType56/Q_RADIATORへ引き渡しています。
入力されたQ_RADIATORの行き先を調べると、Zone, DININGのGarin/lossに割り当てられているGain type、QRADIATORのscaleで利用されていることがわかります。
Gain type、QRADIATORの定義はというと、Radiative(放射)、Convective(対流)の割合のみ設定しています。Radiatorなので放射の割合が多くなっています。(これ値が0.3、0.8で、足すと1.1になってしまうので、0.3 と0.7の間違いでしょうね)
まとめると、Radiatorで計算されたHeat Transfer Rate(熱伝達量)をGaint typeを使って、放射と対流成分に分けてZoneへ割り当てていることになります。
以上で、Type56、Radiator、それぞれの計算結果を基に、相互に計算が成立します。
おまけ
Zoneに割り当てたGain typeはgeo positionで位置を指定することもできます。(残念ながらこのサンプルでは形状データを持たないモデルなので使えません。SketchUp/TRNSYS3Dで作成したモデルなら、部屋の中の熱源の位置を指定できます)
動作環境
以下の環境で動作を確認しています。
- Windows11 Pro(64bit, 24H2)
- TRNSYS18.06.0002(64bit)
- TESS HVAC Library 18.0