TRNSYSで内断熱と外断熱は計算できる?

受託でTRNSYSの計算を行うことがあります。割と多いのが断熱性能の検討の案件です。断熱性の種類や、厚みなど。また、これに加えて蓄熱性能の考慮が含まれることが多々あります。どこに蓄熱部位を設けたら効果があるか、もしくは無いかといった検討を行います。典型的なのが内断熱外断熱の比較です。

ところで、外断熱ってなんでしょうか?

外断熱(そとだんねつ、英: External wall insulation)は、建物の断熱層の位置もしくはその工法を指す。主にコンクリート構造物など熱容量の大きい建物の外側に、断熱層を設け、建物を外気から断熱して、建物の蓄熱(または冷却した状態)を逃がさないようにする方式。逆に、外周の鉄筋コンクリート躯体の内側で断熱する工法は、内断熱という。

Wikipedia:外断熱より引用

単純な話、断熱材が躯体の外側なのか内側に位置するかの違いです。初めて外断熱って聞いた時は何が良いのかぴんと来なかったのですが、ポイントは蓄熱です。Wikipediaの説明にあるように、RC造のような熱容量の大きな躯体では蓄熱、蓄冷効果が得やすくなります。

TRNSYSで内断熱と外断熱を扱う

計算用の建物モデルの躯体はConstruction Typeで定義しますが、内断熱と外断熱の違いはLayerの並び順として扱う事ができます。

下の図はTRNBuildのConstruction Typeの設定画面です。この画面をよく見るとLayerの項目にfront/inside, backの表示があります。

材料の並び順(Fornt/Back)
材料の並び順(Fornt/Back)

このfront/inside, backの順で、Layerの並びが建物モデルの壁に適用されます。

Construction TypeのFront/Back
Construction TypeのFront/Back
ZoneとFront/Back
ZoneとFront/Back

基本的には室内から室外へ向かう並び順として扱われます。平面、立面にすると、図の矢印の向きで扱われます。

この並び順を内断熱、外断熱の材料構成に合わせた Construction Typeを定義することで計算を行うことができます。

計算してみると

下の図はまったく同じ材料の構成でFront/Backの並び順を逆順にして計算した室温の結果です。

内断熱、外断熱の比較例(東京、5/1から5日間の自然室温)
内断熱、外断熱の比較例(東京、5/1から5日間の自然室温)

同じ材料の構成でも断熱材と駆体の位置が入れ替わると室温の振る舞いが全く違ってくる事が分かります。くどいようですが材料の並び順変えただけですよ、これ。

断熱性能で比べると

この例では材料を並び替えただけなので、断熱性能で見るとまったく同じです。図はConstruction Typeの設定画面ですが、並び順を変えてもU値は全く同じになっています。(u-valueはどちらも 0.250 W/m2K)

内断熱の構成
内断熱の構成
外断熱の構成
外断熱の構成

断熱性能が同じでも蓄熱の取り方で建物の振る舞いとしては大きく変わります。面白いですよね。一般的に木造では蓄熱部位が少なくなりますが、壁や床に熱容量の大きな材料を使う事で蓄熱効果を得る事ができます。蓄熱がうまく働くか、逆にわるく働くか、シミュレーションを繰り返す事で検討する事ができます。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit)
TRNSYS18.00.0017(64bit)

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