TRNSYSに材料を登録する

2019/5/28 記載内容を更新

TRNSYS/TRNBuildでは任意の材料データを追加できます。以下の2つの形式で扱います。

  • Massive Layer
  • Massless Layer

Massive Layer

物性値として以下の3つの値を使って材料を定義します。一般的に材料の定義はこのMassive layerを使用します。

  • Conductivity(熱伝導率)
  • Capacity(比熱)
  • Density(密度)

以下、コンクリートの設定例です。

コンクリートの設定例
コンクリートの設定例

これらの値は文献やカタログデータ、メーカーの資料などから入手します。この例ではHASPEE*の物性値を使用しています。

*出典:試して学ぶ熱負荷HASPEE、空気調和衛生工学会、2012年

注意点としては、資料にもよりますが、たいていの場合物性値はSI単位系で記載されています。SIでは熱伝導率の単位は[W/mK]ですが、TRNSYSでは[kJ/hmK]で扱います。このため、単位換算が必要です。

1W=1J/s=3.6kJ/hなので、1W/mK=3.6kJ/h/mK=3.6kJ/hmKとして換算を行います。

先ほどの画面の例をSI単位とTRNSYSの単位で比べると次のようになります。

コンクリートの材料物性値:SI単位とTRNSYSの単位
コンクリートの材料物性値:SI単位とTRNSYSの単位

物性値が容積比熱で記載されているケースがありますが、容積比熱は、

容積比熱[kJ/m3K] = 比熱[kJ/kgK] x 密度[kg/m3] 

なので、比熱、密度の何れかに値を入力し、もう一方へは1を入力して最終的に容積比熱の値になるように登録します。(ちょっと変な感じがしますが、内部の計算では容積比熱で扱うため、こういう入力で問題ありません)

スタイロフォームを登録する

実際に存在する断熱材を例に入力してみます。スタイロフォームを例に、メーカーのサイトの物性表などから値を拾い出して登録します。

この例では スタイロフォームIB の値を使用しています。

  • Conductivity(熱伝導率):0.036 [W/mK]
  • Capacity(比熱): 1.1[kJ/kgK]
  • Density(密度):20[kg/m3]

この値を換算して、TRNSYS/TRNBuildで値を入力して材料を登録します。

スタイロフォームの物性値の換算
スタイロフォームの物性値の換算

上の表ですが、HASPEEとメーカーのサイトで単位系が違っている点に注意して下さい。

スタイロフォームの設定例

材料データを登録する際はあらかじめ換算用のシートを用意しておくと、間違いもなく効率的です。ここで紹介した例はGithubで公開しています。

材料物性値.xlsx

このリンク先で、画面中央下の「View raw」をクリックするとダウンロードできます。

Massless Layer(熱抵抗)

材料によっては熱抵抗値で登録するケースもあります。Massive layerでは熱伝達関数が生成できない(つまりエラーになります)ケースでは、Massless Layerで材料を扱います。金属などの薄い材料や断熱材など、蓄熱の影響が無視できる材料はMassless Layerとして定義します。

Massless Layerでは熱抵抗で材料を登録します。熱抵抗はSIでは[m2K/W]ですが、TRNSYSでは[hm2K/kJ]です。次のように換算します。

1 m2K/W = 1/3.6 hm2K/kJ

スタイロフォームを例に取ると、メーカーのサイトではスタイロフォームIB の厚さ50mm1.4[m2K]、換算して0.3888[hm2K/kJ]で、次のようになります。

Massless LayerでスタイロフォームIB 50mmを登録
Massless LayerでスタイロフォームIB 50mmを登録

おまけ

熱伝導率から求める場合はこちら。微妙に値が違っています。熱抵抗値が分かっている場合は、そちらの値を使うのが無難か?

以上、単位換算が少々厄介ですが、それさえ注意すれば、任意の材料を扱うことができます。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit, 1803)
TRNSYS18.01.0001(64bit)

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1件のコメント

  • とても前の投稿にコメントをしてしまい申し訳ございません。トランシス利用者なのでですが。材料の登録はどちらのコマンドから入力できるか教えてください。

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