吹き抜けの部屋を作る

ここ数日、立て続けに「吹き抜け」の作り方の相談をいただきました。
TRNSYSで住宅のモデルでは、ありがちな話なので簡単にまとめておきます。計算の目的により、いくつか作り方が考えられますが、ここではシンプルな2パターンを紹介します。

Zoneとしてまとめてしまう

例えば上下階吹き抜けの空間であれば、それを1つのZoneとして作成します。吹き抜けの上下で、特に計算条件や、室温、湿度などの計算結果を区別しなくて構わない場合に向いています。(逆に上下階で分けて扱いたい場合には向いていません。)例えば、図のような1F,2F,屋根まので吹き抜けは、思い切って1個のZoneにまとめてしまいます。

【吹き抜けで、天窓のある例】吹き抜け空間を1つのZoneとしてまとめる
【吹き抜けで、天窓のある例】吹き抜け空間を1つのZoneとしてまとめる

作り方

矩形を描いて軒の高さまで立ち上げたら、ペンで屋根面に線を描く。この線が棟になります。

軒高まで立ち上げて、屋根面に分割線を描く
軒高まで立ち上げて、屋根面に分割線を描く

移動ツールで、描いた線をZ軸方向へ、ぐぐぐっっと持ち上げたら切妻屋根のできあがり。あとは天窓を描けば完了です。

屋根面の分割線を持ち上げて切妻屋根を作る
屋根面の分割線を持ち上げて切妻屋根を作る

Airnodeで分割する

吹き抜けの上下で分けて扱いたい場合は、Zone内でAirnodeとして分けて作成します。Airnodeで分けると、それぞれ個別に条件設定、計算結果を出力することができます。

この例では1F,2F,屋根でAirnodeに分割して、Zoneとしては1つにしています。

吹き抜けの空間を上下2つのAirnodeとしてモデリング
吹き抜けの空間を上下2つのAirnodeとしてモデリング

作り方

1.TRNSYS3Dでモデリング

はじめにTRNSYS3Dで、1F,2F,ROOFのZoneを作成します。屋根の形状の作り方は、前述の方法を参考にして下さい。

すべてのZoneを作成したらSurface Matchingを行って、Constructionの設定をしておきます。

Zoneを作成して、Surface matching、Constructionを設定する
Zoneを作成して、Surface matching、Constructionを設定する

2.VirtualSurfaceを割り当てる

このままTRNBuildへインポートすると、通常のZoneとして変換されてしまうので、境界部分の壁には特殊な材料、VirtualSurfaceを割り当てます。こうすると、TRNBuildでAirnodeとして扱うことができます。(割り当てないと、壁があることになるので、Airnodeとして扱えなくなります)

具体的には1Fと2F、2FとROOFの間の壁をVirtualSurfaceへ変更します。

図は1Fの屋根側(2F側)の壁の設定例です。通常はTypeはCeiling、ConstructionにはADJ_CEILINGが割り当てられているので、ここを VirtualSurface へ変更します。

1Fの屋根(天井)へVirtualSurfaceを割り当てる
1Fの屋根(天井)へVirtualSurfaceを割り当てる

2Fの床面(1F側)もConstructionをVirtualSurfaceへ変更します。

2Fの床面へVirtualSurfaceを割り当てる
2Fの床面へVirtualSurfaceを割り当てる

2F,ROOFの壁も同じようにVirtualSurfaceへ変更しておきます。これで準備完了。

3.TRNBuildへインポート

TRNBuildへインポートすると、図のような状態になります。この段階では1F,2F,ROOFはそれぞれZoneとして読み込まています。

TRNBuildへインポートするとZoneとして読み込まれる
TRNBuildへインポートするとZoneとして読み込まれる

4.AirnodeとしてZoneにまとめる

Zoneを別のZoneへ移動するとAirnodeとして扱われるようになります。(ここ、ちょっと分かりにくいですが、我慢して先へ進んで下さい)

移動の方法ですが、まずはじめに移動するZoneを選択して、Zoneウィンドウを表示します。この例では 2F を選んでいます。

Zoneを選択して、Zoneウィンドウを表示する
Zoneを選択して、Zoneウィンドウを表示する

この画面で、①左上の矢印アイコンをクリック、次に移動先のZoneを指定します。②target zoneの項目でROOFを選択して、③✔アイコンをクリックします。

2FをROOFへAirnodeとして移動する
2FをROOFへAirnodeとして移動する

これで下図のように、ROOF 2F が1つのZoneへまとめられます。

ROOF と 2F が1つのZoneへまとめられている
ROOF と 2F が1つのZoneへまとめられている

1F も同じように選択して、ROOFへ移動して1つのZoneへまとめます。

Zone, ROOFにArinode(ROOF,2F,1F)がまとめられている
Zone, ROOFにArinode(ROOF,2F,1F)がまとめられている

以上で吹き抜けのできあがりです。

注意点

この例では、吹き抜け空間が凸型なので、Radiation modeはStandard,Detailedのどちらでも計算できます。これが凹型の空間、例えば1F,2Fで面積が変わるなどすると、Standardのみ使用可になります。この場合、放射や日射の計算が重要なケースでは形状を読み替えるなどの、Radiation modeで計算できるようにする工夫が要ります。

そもそもZoneじゃだめなの?

そもそもZoneで分けてはダメなのかという話もありますが、Zoneだと必ず内壁(Adjacent Wall)ができてしまうので、日射の影響が考慮されなくなります。今回の例だと、天窓からの日射がROOFの床と2Fの床で遮られて1Fまで届かなくなります。(内部開口を使うなどの読み替えもできますが、ちょっと面倒になります)

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。

Windows10 Pro(64bit)
TRNSYS18.00.0014(64bit)
TRNSYS3D+SketchUp 8

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