タイムステップを短くすると室温が階段状に変化する(TRNSYS-USERSより)

多数室モデルで暖冷房負荷する場合、一般的には1hステップで計算を行います。でも、システム系の計算と組み合わせる場合などは短いタイムステップで計算することがあります。例えば、エアコンの動きを詳しく見たい場合などは分単位で計算しくなりますよね?

TRNSYS-USERSに短いタイムステップで計算したら、室温が階段状に変化するという質問が流れていました。

[TRNSYS-users] Building simulation – Zones temperature dynamics

実際に簡単なモデルで試すと、次のような結果になります。

一日の室温の変動

これはタイムステップ 0.1hで計算しています。確かに階段状というか、なんか室温がギザギザですよね?

これに対しての回答がこちらです。

 The wall transfer function coefficients are computed with a certain time base. When you run a simulation in which your time step is a lot smaller than the wall time base you start to see the times at which the wall transfer function coefficients are updated, which produces this step-like plot. Depending on the construction of the walls in your building, you can probably reduce the wall timebase and get rid of the steps. The time base is set in TRNBuild’s output manager. I’d suggest using a 0.25h time base.

TRNSYS-USERSより

以下、和訳です。

壁の熱伝達係数は、特定のタイムベースで計算されます。タイムステップが壁のタイムベースよりも短いタイムステップでシミュレーションを実行すると、壁の熱伝達係数が更新される時間が見え始め、このようなステップのようなプロットが得られます。
建物の壁の構造によっては、壁のタイムベースを減らしてステップを取り除くことができるでしょう。タイムベースはTRNBuildの出力マネージャで設定します。
私は0.25hのタイムベースを使うことをお勧めします。

ということで、熱伝達係数の計算のタイミングの影響が出ているようです。

この動きって、以前から気になっていて、何度か開発元へ問い合わせた事があります。なかなか納得のいく理由が分らなかったんですが、ようやく謎が解けました。(訊く相手を間違えていたのかも?)

TimebaseはTRNBuildのOutput Managerで設定します。(図の赤枠の部分)

Timebaseをデフォルトの1hから0.5hへ変更
Timebaseをデフォルトの1hから0.5hへ変更

図のようにTimebaseを0.5hに変更して計算すると、次のような結果になります。(上記の0.25hにしなかった理由は後述します)

室温の変化がだいぶ滑らかに変わっている

だいぶキザギザした感じが消えてきました。

Timebaseの影響

Timebaseを変更すると、上記のように室温の計算結果がなだらかになりますが、他にも影響します。

下の図は、Timebaseを0.25hに変更して、ファイルを保存しようとしたら表示されたエラーメッセージです。

TRNBuildの保存のタイミングでエラーメッセージが表示される
TRNBuildの保存のタイミングでエラーメッセージが表示される

Error creating the wall transfer function coefficients:
Stability criteria not fullfilled
Check layer definition(thickness, ratio of conductivity/density)
Please, check the INF-file for further information.

壁面伝達関数係数の作成でエラーが発生しました。
安定性基準が満たされていない
層の定義を確認する(厚さ、熱伝導/密度の比)
詳細はINFファイルをご確認ください。

TRNBuildはファイルを保存する際に熱伝達係数の計算を行っています。Timebaseの値を変更すると、この計算にも影響します。先ほどTimebaseを0.5hにしていたのは、このエラーを避けるためです。

その他、対策としてはメッセージにあるように壁の定義を変更する方法もあります。

計算上、壁に蓄熱性があって薄い材料があると、このエラーになりがちです。例えば、せっこうボードなど。

もしエラーになったら、材料の厚みやの調整や、熱抵抗レイヤー(Massless layer)へ変更してお試し下さい。

以下、エラーメッセージはちょっと違いますが、TRNBuildのファイル保存時のエラー対策の記事のリンクを貼っておきます。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit, 1909)
TRNSYS18.02.0002(64bit)

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